
不動産業界で事業を行うためには、宅地建物取引業法に基づく宅地建物取引業免許(不動産免許)が必要です。
しかし、法律を遵守せずに業務を行ったり、不適切な取引を行ったりすると、この免許が剥奪される可能性があります。
免許が剥奪されると、事業の継続が不可能になるだけでなく、社会的信用の失墜にもつながるため、不動産業を営む上で法令遵守は不可欠です。
今回は、不動産免許が剥奪される主な事案や具体例、事業者が注意すべきポイントについて解説します。
不動産免許の剥奪とは?

不動産免許の剥奪とは、宅地建物取引業者としての許可が取り消される行政処分を指します。
国土交通大臣または都道府県知事が管轄し、宅建業法違反や重大な不正行為が確認された場合に免許取り消しの処分を下します。
免許が剥奪されると、再取得には一定期間(通常は5年間)を経る必要があるため、事業者にとって致命的なダメージとなります。
また、役員が宅建業法違反で罰則を受けた場合、会社全体が連帯して免許取消の対象となる可能性もあるため、事業運営には細心の注意が必要です。
不動産免許が剥奪される主な事案と具体例

不動産免許が剥奪される原因は多岐にわたりますが、以下のような違反行為が主な理由となります。
- 宅地建物取引業法違反
- 契約不履行やトラブルの常習化
- 法定書類の不備や虚偽記載
- 反社会的勢力との関与
- 重大な法令違反や犯罪行為
具体例を交えて解説します。
宅地建物取引業法違反
宅建業法(宅地建物取引業法)は、不動産業界における健全な取引の秩序を維持するための法律です。
契約時の重要事項説明の省略や、虚偽説明、契約不履行などが発覚すると、免許取り消しにつながる可能性があります。
【具体例】
- 不動産契約時に、物件の重要な瑕疵(雨漏りやシロアリ被害)を故意に説明しなかった
- 重要事項説明書に虚偽の情報を記載し、顧客に誤った認識を与えた
- 宅地建物取引士が不在の状態で重要事項説明を行った
これらの行為は、顧客に大きな損害を与える可能性があるため、厳しい行政処分の対象となります。
契約不履行やトラブルの常習化
不動産取引において、契約を履行しない、または顧客とのトラブルを繰り返す場合も免許剥奪の対象となります。
特に、解約金や預かり金の不正流用が発覚した場合、信用失墜により免許の取り消しに直結します。
【具体例】
- 顧客から預かった手付金を会社の運転資金に無断で使用した
- 契約書に記載された引き渡し期限を守らず、顧客と裁判に発展した
- 賃貸契約の更新時に、不当な手数料を請求し、複数のクレームが寄せられた
不動産取引では、顧客の資産を取り扱うため、信頼性の高い取引姿勢が求められます。
法定書類の不備や虚偽記載
不動産業務では、重要事項説明書、契約書、登記申請書類など、さまざまな書類が必要です。
これらの法定書類に不備や虚偽記載があった場合も免許取消の対象となります。
【具体例】
- 重要事項説明書に不動産の用途制限について虚偽の記載を行った
- 売買契約書に記載すべき法的事項を故意に省略した
- 書類の保管義務(5年間)を怠り、監査時に提出できなかった
書類作成・管理は法令で定められているため、担当者の教育やダブルチェック体制の構築が必要です。
反社会的勢力との関与
不動産業界は資産や大きな金額が動くため、反社会的勢力が介入するリスクも指摘されています。
事業者が反社会的勢力と関与していることが発覚した場合、即座に免許取り消しの対象となります。
【具体例】
- 賃貸物件の仲介業務を反社会的勢力関係者に依頼された
- 知らずに反社会的勢力と不動産取引を行った後、適切な報告や対応をしなかった
- 社内で反社会的勢力との接触禁止に関する教育やルールを定めていなかった
このようなトラブルを避けるためには、取引相手の身元確認を徹底することが必要です。
重大な法令違反や犯罪行為
不動産業務以外においても、会社や代表者が重大な法令違反を犯した場合、免許剥奪に至るケースがあります。
特に、詐欺や脱税、業務上横領などの犯罪行為が発覚した場合は、行政処分の対象となります。
【具体例】
- 不動産取引で顧客から受け取った代金を横領した
- 税務申告時に売上をごまかし、意図的に脱税した
- 不動産購入資金の名目で虚偽の融資申請を行った
会社の信頼性を維持するためには、法令遵守の意識を組織全体で共有することが大切です。
不動産免許剥奪を防ぐためのポイント

免許剥奪を防ぐためには、日常業務におけるコンプライアンス意識の徹底が欠かせません。
以下のポイントを参考に、法令遵守のための体制を整備しましょう。
- 従業員への法令研修の実施
- 内部監査体制の整備
- 顧客への誠実な対応を徹底
それぞれについて解説します。
従業員への法令研修の実施
不動産業務に携わる従業員が法令を正しく理解していないと、知らず知らずのうちに法令違反をしてしまう可能性があります。
たとえば以下のような内容の研修を定期的に実施しましょう。
- 宅建業法の基礎と最新改正ポイント
- 重要事項説明書作成時の注意点
- 反社会的勢力との取引回避方法
宅建業法や関連法令の改正内容を随時共有することで、違反リスクを軽減できます。
内部監査体制の整備
不動産業務は書類管理や顧客対応など、多岐にわたる業務が伴います。
以下のような内部監査を定期的に行いましょう。
- 重要書類の保管状況を四半期ごとに確認
- 顧客からのクレーム内容を分析し、業務改善につなげる
- 新規取引先に対する反社会的勢力の関与有無の確認
書類の記載内容や業務フローに不備がないかを確認する体制を構築してください。
顧客への誠実な対応を徹底
不動産取引において、顧客の信頼を得ることが最も重要です。
短期的な利益を優先し、虚偽説明や過剰な営業を行うと、信用を失い免許剥奪につながる可能性があります。
顧客第一の姿勢を貫き、誠実な対応を心がけることで、信頼性を高めることができます。
法令遵守を徹底して不動産免許を守ろう

不動産免許は、事業を継続するための生命線です。
宅建業法の遵守、適正な書類作成、顧客対応の誠実さ、反社会的勢力との関与回避など、日頃からコンプライアンスを徹底することが、不動産免許を守るための最善の対策です。
また、業務効率を高めるためには、快適で業務に集中できるオフィス環境も重要です。
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